相続人が本来持っている相続権で、被相続人(亡くなった人)の遺言でもってしても侵害できない権利が、遺留分(いりゅうぶん)です。
遺言で、すべての財産を妻に相続させる、と書いても、子どもには遺留分がありますので、子どもが被相続人の妻である母親に遺留分を主張したら、母は子どもに遺留分相当の代価を支払う義務があります。
この遺留分の主張、請求を、遺留分の減殺請求(げんさいせいきゅう)といいます。
これは民法で定められた、相続人固有の権利です。法定相続分の2分の1を請求できます。
遺産分割でとくに問題になるのがこの遺留分です。これから遺言を書くときは相続人の遺留分を侵害しないよう注意し、相続が始まって他の相続人の遺留分を侵害するほどの財産を相続した方は、他の相続人の遺留分に配慮して代価を渡してあげるのがよいでしょう。遺留分を侵害された方は本来得るべき相続分を渡してもらえるよう、多額の相続を受けた相続人に遺留分減殺請求をおこなうことになります。
遺留分相当の代価をどうしても渡してもらえないときは、内容証明郵便で請求をします。これは、遺留分減殺請求権の時効が、遺留分の侵害を知ったときから1年だからです。
どんなに口頭で遺留分減殺請求をしても、和解しないまま1年が過ぎてしまうと、時効になり、請求をしなかったことになりかねませんので、請求をした証拠を残すために、内容証明郵便を利用します。
とはいえ遺留分でもめてしまうと、なかなか解決することができないのが現状です。相続をさせる立場の方は、相続人に遺留分という権利があることを知って、十分に配慮されるのがよいといえます。