戦前の民法は家長制度でした。家は長男が継ぐもの、次男坊や女性は家督を相続しない、というものです。

戦後、法律が変わりましたが、それでも日本人の心情として、家は長男が継ぐ、という考えは根強く残っています。

実子に男がいないからと、婿養子をもらってお家を存続させるということも、一般的におこなわれています。

ただし、現在は慣習・道徳的にそれらがおこなわれているだけであって、法律的に正しい行為である、ということではありません。

法律上、長男以外の兄弟姉妹にも、親が築いたり受け継いだりしてきた財産を相続する権利が等しく認められています。

家を継ぐものが代表して相続したら、兄弟姉妹にはいくばくかの代償金は支払う義務があります。

ここを誤解すると相続トラブルとなりますので、くれぐれも注意してください。

 

先祖代々のお墓を守っていくことへの金銭負担

これと関連したケースで、長男として家を継ぎ、お墓も継ぐのだから、法要などにお金がかかる、その分は多めに相続したい、というものがあります。

基本的には間違っていません。

しかし、過度の金銭を要求、とくに数百万円から一千万円くらいを、余分に相続権を主張されるケースが多いようです。

注意して欲しいのは、お墓を守ったり故人の法要を行なうという行為は、いわば宗教的なおこないであって、法的な義務ではないということです。

それでも、お葬式費用は相続財産から支払われるのが通例ですから、これにならって、実際にかかった費用、もしくはかかると思われる費用を主張されるのが法的には正しいでしょう。 法律は国民に強要されますが、道徳的な行為を人に強要することはできません。 それがどんなに正しいおこないであっても、です。

仏教では、お骨を納骨せずに、仏壇などに安置することも認められています。故人の弔いに関してこうしなければならない、という絶対的なルールはありません。考え方を柔軟にして、故人に対する敬意を表するのが、残された遺族の相続争いを未然に防ぐ手立てともなり、故人の供養ともなります。